【青瓷 伊藤秀人】Exhibition of Ito Hidehito

開催期間:2016年5月20日(金) ~ 2016年5月24日(火)Exhibition : May 20 to May 24, 2016
想いの造形 ― 伊藤秀人の「青瓷」
 
近年、青磁(青瓷)に取り組む陶芸家が増えている。伊藤秀人(1971年生まれ)もその一人だ。伊藤は、定窯風の白瓷や練り込みを応用した練彩など、繊細さや優美さを持ち味とした作品をも手掛けており、青瓷によってさらなる作域の広がりを見せている。
 
2015年6月、しぶや黒田陶苑で開催した「青瓷 伊藤秀人展」では、下蕪形や砧形の瓶、輪花形の碗や鉢、さらには米色瓷による茶碗や花瓶など、その時点における到達点といえる作品を発表し、青瓷に対する伊藤の想いを伝えていた。この時の青瓷に対する視線の先には、北宋や南宋の青磁、その中でも官窯や砧青磁系の美しい釉色と釉調、そしてフォルムがあり、それらを祖とする取り組みが見られた。その姿勢は伊藤がDMに綴った「宋代の青瓷は世に現れたもっとも美しいやきものだと思っている。だったらその特別な美しさに、青瓷を青瓷たらしめる何かに少しでもふれてみたいと思うのだ」という言葉にも現れていた。伊藤は古陶を見据えることによって、素地や釉薬などの素材の吟味に始まり、フォルムの追求や細部のつくり込み、さらには青瓷というやきものから伝わる精神性までも学び、自身の血肉にしようとしたといえるだろう。
 
そして今回の個展では、伊藤の想いがさらなる深化を遂げたのである。それは「青瓷を青瓷たらしめる何か」にヒントがある。
 
これまでの伊藤の作品からは、フォルムの美しさやバランスなど、造形としてのこだわりが強く感じられた。おそらく多くの鑑賞者もそのことを意識しながら作品を観たことだろう。ところが今回、現時点で伊藤がたどり着き、答えとしたものは、古典から学んだフォルムや細部の形ではなく、青磁(青瓷)というやきものが見せる究極の美しさ、さらには古典の青磁が原点とした金属器の力強さや緊張感なのである。
 
青磁(青瓷)を追い求めている陶芸家の多くは、伊藤と同じように古典を拠り所とし、その研究を通して自身の釉色や釉調、さらにはフォルムを生み出している。それは嶺男青瓷という独自の青瓷を生み出した岡部嶺男の姿勢にも見られるが、青瓷の技術・技法を駆使して、青瓷というやきものによる表現の幅を広げる活動といえる。伊藤が今回チャレンジしたものは、「自身の青瓷」を見つけたいという想いを一点に集中させた、「ど真ん中の青瓷」への探究といえるかもしれない。
 
その作品は、深い鉦鉢のように側面が立ち上がった形だが、底がない。底面はぴったりと底に付いているが、立ち上がった側面にはわずかな揺らぎがあり、それと対するかのように口縁部は真円である。とても不思議な造形だが、ずっと観ていると、鮮やかな色合いやしっとりとした質感、貫入の美しさ、さらには焼き味が伝わってきて、強く「青瓷」を意識するのである。また、揺らぎを伴った側面から揺らぎのない口縁部への繋がりを観ていると、原点となる金属器の姿も見えてくる。これも不思議な感覚であるが、青瓷というやきものを突き詰めていくと、究極の姿としてこのような捉え方も有り得るかもしれないと思えてくる。
 
そしてもう一点、今回の伊藤は、砧形のようなフォルムでありながら口が開いてない作品も生み出している。こちらは古典との繋がりを感じさせるが、観ていると青瓷の見どころとしての釉色や釉調、質感に自然と焦点が合わされていく感覚がある。
 
今回の個展は、伊藤の想いの深さを強く感じさせる、現時点での究極の青瓷が観られるのである。古典を拠り所として出発した作陶が掴みとった作品を前に、是非、伊藤にさまざまに問いかけて欲しい。想いの造形としての青瓷の姿を感じ取ることができるだろう。
唐澤昌宏 (東京国立近代美術館工芸課長)

作品No.1 青瓷「輪」

【青瓷 伊藤秀人】Exhibition of Ito Hidehito
39.8×H24.0
864,000 円(税込/including tax)

作品No.2 青瓷「先」 

【青瓷 伊藤秀人】Exhibition of Ito Hidehito
30.2×H45.5
864,000 円(税込/including tax)

作品No.3 青瓷下蕪瓶 Vase, Celadon

【青瓷 伊藤秀人】Exhibition of Ito Hidehito
14.0×H24.6
302,400円(税込/including tax)

作品No.4 青瓷盤口瓶 Vase, Celadon

【青瓷 伊藤秀人】Exhibition of Ito Hidehito
10.9×H18.6
270,000円(税込/including tax)

作品No.5 青瓷筒 Vase, Celadon

【青瓷 伊藤秀人】Exhibition of Ito Hidehito
7.3×H17.9
129,600円(税込/including tax)

作品No.6 青瓷茶碗 Tea bowl, Celadon

【青瓷 伊藤秀人】Exhibition of Ito Hidehito
13.9×H7.1
216,000円(税込/including tax)

作品No.7 青瓷茶碗 Tea bowl, Celadon

【青瓷 伊藤秀人】Exhibition of Ito Hidehito
15.2×H6.0
162,000円(税込/including tax)

作品No.8 青瓷筒茶碗 Tea bowl, Celadon

【青瓷 伊藤秀人】Exhibition of Ito Hidehito
10.6×H9.5
162,000円(税込/including tax)

作品No.9 米色瓷茶碗 Tea bowl, Beishoku(cream-color) Celadon

【青瓷 伊藤秀人】Exhibition of Ito Hidehito
12.1×H6.0
129,600円(税込/including tax)

作品No.10 米色瓷茶碗 Tea bowl, Beishoku(cream-color) Celadon

【青瓷 伊藤秀人】Exhibition of Ito Hidehito
14.3×H5.9
129,600円(税込/including tax)
※ ご紹介しております中には、ご売約戴いている作品もございます。
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