Vase 花入

黒田先生の作品はどれも柔和な曲線で連なる白磁でできていて、シンプルゆえに傍観する人の心をとらえる堂々とした存在感が沸き立つ。ひときわその質量感に目を奪われるが、そこには黒田先生のこれまでの作陶プロセスにおいて心の内奥に沈殿している苦悩や葛藤が染み出ており、黒田先生のアイデンティティそのものが作品に深く刻まれている。一切の無駄を排した研ぎ澄まされた感性とは、この真正さのことであろうか。花入のふっくらとしたふくらみからは、凛としたたおやかな響きが伝わってくる。